味覚障害の原因
任らは自施設(兵庫医科大学耳鼻咽喉科)味覚外来を受診し、転帰を確定し得た1,943例において、味覚障害の原因について、図1のように報告しています。原因による分類の上位は特発性、心因性、薬剤性、亜鉛欠乏性でした1)。
亜鉛欠乏が主な原因であるのが、亜鉛欠乏性、特発性であり、また、薬剤性、感冒後、全身疾患性などにも亜鉛欠乏が関与すると考えられています。
図1 味覚障害の原因1)
*1: 対象:1999年1月から2016年3月までの17年3ヵ月の間に味覚外来を受診した味覚障害例1,943例。
亜鉛欠乏性味覚障害は血清亜鉛値が80μg/dL未満例、特発性味覚障害は血清亜鉛値が80μg/dL以上であるが他に明らかな原因はなく潜在的亜鉛欠乏が疑われる例、と定義した。
(「亜鉛欠乏症の診療指針2)」における亜鉛欠乏症は血清亜鉛値が60μg/dL 未満、潜在性亜鉛欠乏は60?80μg/dL 未満と定義されている。)
亜鉛不足による味覚障害の機序
舌上皮表面には茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭、糸状乳頭の4種類の舌乳頭がみられ、前者3つには味蕾が存在します。そして味蕾には、味細胞があり、味覚受容体細胞として味物質を感知します。味細胞は通常、細胞分裂をして新生交代されますが、体内の亜鉛が不足すると、細胞のターンオーバーが延長し、機能低下を来します1)。
亜鉛補充療法による治療効果
西井らは、上記1,943例の亜鉛補充療法を第一選択とした味覚障害の治療について、次のように報告しています1)。図2は、VASを用いて自覚症状の改善率を原因別にみたものです。亜鉛補充療法による治癒は、亜鉛欠乏性で約77%に、薬剤性で約60%にみられ、治療から改善までの期間(平均)は、鉄欠乏性21.0週間、亜鉛欠乏性22.7週間、心因性29.3週間、特発性31.8週間、薬剤性は43.2週間でした1)。一方、電気味覚検査を用いた評価も並行して行っていますが、改善率は悪い傾向にあり、VASとの乖離が認められたと報告しています。
図2 亜鉛補充療法による原因別改善率(n=981)1)
(試験概要)
対象:1999年1月から2016年3月までの17年間で兵庫医科大学耳鼻咽喉科味覚外来を味覚異常で受診した1,943例。
方法:亜鉛製剤については硫酸亜鉛*2(100mg~300mg/日、亜鉛換算21~63mg/日)、ポラプレジンク*3(150mg /日、亜鉛換算34mg/日)を投与した。鉄欠乏症例にはクエン酸第一鉄ナトリウムを、心因性の症例*4には抗不安薬(ベンゾジアゼピン系、SSRIなど)、口腔乾燥を伴う症例には唾液分泌促進剤、漢方薬を併用した。味覚障害の改善度は、自覚症状(VAS:visual analogue scale)、電気味覚検査、濾紙ディスク法を用いて、治療終了まで1カ月、3カ月、6カ月、1年、1.5年、2年の間隔で評価した。
*2 院内調剤または製剤
*3 最新の添付文書をご確認ください。
*4 SDS(self-rating depression score)にて高値を示した症例
1) 西井智子ほか:口腔・咽頭科, 29(3):380(B)(総会号)より一部改変
2) 児玉 浩子ほか:日本臨床栄養学会雑誌 38(2) : 104-148, 2016.
解説ページ
低亜鉛血症については、「低亜鉛血症とは」をご覧ください。
味覚障害の原因
任らは自施設(兵庫医科大学耳鼻咽喉科)味覚外来を受診し、転帰を確定し得た1,943例において、味覚障害の原因について、図1のように報告しています。原因による分類の上位は特発性、心因性、薬剤性、亜鉛欠乏性でした1)。
亜鉛欠乏が主な原因であるのが、亜鉛欠乏性、特発性であり、また、薬剤性、感冒後、全身疾患性などにも亜鉛欠乏が関与すると考えられています。
図1 味覚障害の原因1)
*1: 対象:1999年1月から2016年3月までの17年3ヵ月の間に味覚外来を受診した味覚障害例1,943例。
亜鉛欠乏性味覚障害は血清亜鉛値が80μg/dL未満例、特発性味覚障害は血清亜鉛値が80μg/dL以上であるが他に明らかな原因はなく潜在的亜鉛欠乏が疑われる例、と定義した。
(「亜鉛欠乏症の診療指針2)」における亜鉛欠乏症は血清亜鉛値が60μg/dL 未満、潜在性亜鉛欠乏は60?80μg/dL 未満と定義されている。)
亜鉛不足による味覚障害の機序
舌上皮表面には茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭、糸状乳頭の4種類の舌乳頭がみられ、前者3つには味蕾が存在します。そして味蕾には、味細胞があり、味覚受容体細胞として味物質を感知します。味細胞は通常、細胞分裂をして新生交代されますが、体内の亜鉛が不足すると、細胞のターンオーバーが延長し、機能低下を来します1)。
亜鉛補充療法による治療効果
西井らは、上記1,943例の亜鉛補充療法を第一選択とした味覚障害の治療について、次のように報告しています1)。図2は、VASを用いて自覚症状の改善率を原因別にみたものです。亜鉛補充療法による治癒は、亜鉛欠乏性で約77%に、薬剤性で約60%にみられ、治療から改善までの期間(平均)は、鉄欠乏性21.0週間、亜鉛欠乏性22.7週間、心因性29.3週間、特発性31.8週間、薬剤性は43.2週間でした1)。一方、電気味覚検査を用いた評価も並行して行っていますが、改善率は悪い傾向にあり、VASとの乖離が認められたと報告しています。
図2 亜鉛補充療法による原因別改善率(n=981)1)
(試験概要)
対象:1999年1月から2016年3月までの17年間で兵庫医科大学耳鼻咽喉科味覚外来を味覚異常で受診した1,943例。
方法:亜鉛製剤については硫酸亜鉛*2(100mg~300mg/日、亜鉛換算21~63mg/日)、ポラプレジンク*3(150mg /日、亜鉛換算34mg/日)を投与した。鉄欠乏症例にはクエン酸第一鉄ナトリウムを、心因性の症例*4には抗不安薬(ベンゾジアゼピン系、SSRIなど)、口腔乾燥を伴う症例には唾液分泌促進剤、漢方薬を併用した。味覚障害の改善度は、自覚症状(VAS:visual analogue scale)、電気味覚検査、濾紙ディスク法を用いて、治療終了まで1カ月、3カ月、6カ月、1年、1.5年、2年の間隔で評価した。
*2 院内調剤または製剤
*3 最新の添付文書をご確認ください。
*4 SDS(self-rating depression score)にて高値を示した症例
1) 西井智子ほか:口腔・咽頭科, 29(3):380(B)(総会号)より一部改変
2) 児玉 浩子ほか:日本臨床栄養学会雑誌 38(2) : 104-148, 2016.